「私たちのWebサイトは、すべての人にとって使いやすいだろうか」。この問いに、自信を持って「はい」と答えられる企業は、まだ多くありません。高齢者、障がい者、一時的な状況(片手がふさがっている、騒がしい場所など)にある人々。デジタルサービスは、すべての人々が等しく情報にアクセスし、利用できるようにすべきです。私たち株式会社ゆめみは、2000年1月27日の設立以来24年間で、累計200社以上の大企業をご支援してきました。その中で、多くの企業が、アクセシビリティ対応の必要性を感じながらも、どこから手をつければ良いか悩んでいる現状を目の当たりにしてきました。今回はその経験から、アクセシビリティ対応の重要性と、誰でも使えるデジタルサービスを実現するための実践方法についてお話しします。なぜ、アクセシビリティ対応は「特別なこと」ではないのかお客様からご相談いただくアクセシビリティ対応の課題の多くは、「特定の人のための特別な対応」という誤解から生じています。しかし、アクセシビリティは、障がいを持つ方々のためだけの問題ではありません。例えば、高齢になって視力が低下した方、一時的に腕を骨折して片手しか使えない方、あるいは屋外で強い日差しの中でスマホを操作する方など、誰もが一時的・状況的に「障がい」を抱える可能性があります。アクセシビリティ対応は、こうした多様な状況にあるすべての人々が、ストレスなくデジタルサービスを利用できるようにするための「普遍的な使いやすさ」を追求するものです。企業の社会的責任であると同時に、それはビジネス機会を広げる重要な戦略でもあります。アクセシビリティ対応の4つの原則(WCAG準拠)ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン(WCAG)は、アクセシブルなWebコンテンツを作成するための国際的な標準です。WCAGは、以下の4つの原則に基づいています。参考:Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2原則1:知覚可能(Perceivable) - 「認識できる」情報ユーザーが提供されている情報を認識できること。例えば、視覚障がい者には音声で、聴覚障がい者には字幕で、といったように、多様な方法で情報が提供されている必要があります。具体例:画像には代替テキスト(alt属性)を設定し、スクリーンリーダーが内容を読み上げられるようにします。動画には字幕や手話通訳を提供します。色だけに頼らず、形やテキストでも情報を伝える(例:エラー表示を色だけでなくアイコンやテキストでも示す)工夫が求められます。原則2:操作可能(Operable) - 「操作できる」インターフェースユーザーがインターフェースやナビゲーションを操作できること。マウスだけでなく、キーボード操作や音声入力など、多様な入力方法に対応している必要があります。具体例:すべての機能がキーボードだけで操作できるようにします(タブキーでの移動、エンターキーでの選択など)。時間制限のある操作(例:セッションタイムアウト)は、延長できるようにします。点滅するコンテンツや、激しい動きのあるアニメーションは避けるか、停止できるようにします。原則3:理解可能(Understandable) - 「理解できる」情報と操作ユーザーが情報やインターフェースの操作方法を理解できること。専門用語を避け、シンプルで分かりやすい言葉遣いを心がける必要があります。具体例:文章は平易な言葉で書き、専門用語には説明を加えます。一貫性のあるナビゲーションとレイアウトを使用し、ユーザーが迷わないようにします。入力エラーが発生した際には、何が間違っているのか、どうすれば修正できるのかを具体的に示します。原則4:堅牢(Robust) - 「多様な技術で利用できる」コンテンツコンテンツが、多様なユーザーエージェント(Webブラウザ、支援技術など)で解釈できるほど堅牢であること。新しい技術が導入されても、アクセシビリティが損なわれないように設計する必要があります。具体例:HTMLを正しくマークアップし、セマンティックな構造を保ちます。JavaScriptがオフの状態でも、主要な機能が利用できるようにします。支援技術(スクリーンリーダーなど)がコンテンツを正しく解釈できるように、WAI-ARIA属性などを適切に利用します。アクセシビリティ対応実践の3つのポイントこれらの原則を日々の業務に落とし込むための実践的なポイントをご紹介します。1. 早期からの取り組みアクセシビリティ対応は、開発の最終段階で「付け足す」ものではありません。企画・設計の初期段階からアクセシビリティを考慮することで、手戻りを減らし、結果的にコストを抑えることができます。デザインシステムにアクセシビリティの原則を組み込むことも有効です。2. 多様なユーザーの視点を取り入れるアクセシビリティの専門家だけでなく、実際に様々な特性を持つユーザーに、開発中のサービスを試してもらい、フィードバックを得ることが重要です。ユーザビリティテストに、多様な背景を持つ参加者を招くことで、より多くの課題を発見できます。3. 継続的な改善サイクルアクセシビリティ対応は、一度行えば終わりではありません。技術の進化やユーザーのニーズの変化に合わせて、継続的に改善していく必要があります。定期的なチェックや、ユーザーからのフィードバックを収集する仕組みを構築し、改善サイクルを回し続けることが重要です。読者の方へのメッセージアクセシビリティ対応は、単なる「義務」ではありません。それは、企業のブランドイメージを高め、より多くのユーザーにリーチし、社会に貢献するための「投資」です。誰一人取り残さないデジタル社会の実現に向けて、皆様のサービスがその一翼を担うことを願っています。まとめアクセシビリティ対応は、デジタルサービスが社会のインフラとなる現代において、企業が果たすべき重要な役割です。WCAGの4つの原則に基づき、早期から取り組み、多様なユーザーの視点を取り入れ、継続的な改善サイクルを回すことで、より多くの人に使いやすいサービスを提供できます。このような取り組みは、ビジネスの成長と社会貢献を両立させる投資としても意味があります。このような課題をお持ちの企業様は、ぜひゆめみにご相談ください。ゆめみは一度お取引いただいたお客様との長期的なパートナーシップを重視し、85%を既存顧客様が占める信頼関係を築いています。24年の実績と高い継続率を持つゆめみは、200社以上の支援経験を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。