「顧客体験(UX)を改善したいが、外注では継続的な改善ができない」「デザイナーを採用したが、期待した成果が出ない」「組織全体で一貫した顧客体験を提供したい」多くの企業が顧客体験(UX)改善に取り組んでいますが、外注依存では継続的な改善サイクルを確立できず、ノウハウも蓄積されないという課題に直面しています。顧客体験(UX)の内製化とデザインシステムの活用により、継続的な改善と一貫した体験提供を実現した企業は開発効率が30-50%向上した顧客満足度の数値改善ブランド一貫性が確立され、認知度向上に寄与デザイン・開発ノウハウが組織に蓄積される仕組みができるという成果を実現しています。株式会社ゆめみは24年間で200社以上の大企業のデザイン組織強化を支援し、「内製化支援」という独自のアプローチで数多くの成功事例を生み出してきました。本記事では、その豊富な実績から得られた知見をもとに、顧客体験(UX)の内製化を成功させる具体的な方法とデザインシステムの活用法を詳しく解説します。なぜ外注では顧客体験(UX)が改善しないのか?外注依存の3つの根本的問題1. 継続的な改善サイクルが確立できない外注による一時的な改善では、リリース後の継続的な最適化ができません。顧客体験(UX)は一度の改善で完結するものではなく、ユーザーの声やデータに基づいた継続的な改善が不可欠です。外注で陥りがちな問題リリース後の細かな調整ができないユーザーフィードバックへの迅速な対応が困難になるA/Bテストなどの仮説検証サイクルが回せない改善のたびに外注費用が発生する2. 組織にノウハウが蓄積されない外注に依存すると、なぜそのデザインなのか、どう改善すべきかの判断基準が組織内に残りません。これは長期的に見ると、企業の競争力を大きく損なう要因となります。ノウハウ流出の具体例デザイン判断の根拠が分からないため意思決定ができない次の改善時に前回の学びが活かせない異なる外注先に依頼するたびに一貫性が失われてしまう社内メンバーのスキルが向上しない3. ブランド一貫性の維持が困難複数のプロジェクトを異なる外注先に依頼すると、サービス全体での一貫性を保つことが極めて困難になります。一貫性欠如によって起きる影響画面ごとに異なるUIパターンが存在するユーザーの学習コストが増大するブランド体験の希薄化が進む保守・運用コストが徐々に増加内製化が実現する3つの優位性1. 継続的な改善サイクルの確立内製化により、ユーザーフィードバックに基づく迅速な改善が可能になります。実現できる改善サイクルデータ収集 → 分析 → 仮説立案 → 実装 → 検証 → 再改善このサイクルを2週間〜1ヶ月で高速回転2. デザインシステムによる一貫性の確保社内でデザインシステムを構築・運用することで、サービス全体で統一された顧客体験を提供できます。デザインシステムの詳細については、デザインシステムのメリット|導入効果と組織への価値で包括的に解説していますので、併せてご参照ください。3. 組織の成長と競争力の強化デザインノウハウが組織に蓄積され、長期的な競争優位につながります。顧客体験(UX)内製化の全体像【4つのフェーズ】ゆめみが200社支援から導き出した、顧客体験(UX)内製化の実践的なロードマップをご紹介します。フェーズ1:現状分析と目標設定(1-2ヶ月)現状の顧客体験を可視化する実施すべき4つの分析ユーザージャーニーマップの作成顧客がサービスを利用する全プロセスを可視化する各ステップでの感情や課題を明確化するタッチポイントごとの体験品質を評価する定量データの分析Webサイト:離脱率、コンバージョン率、滞在時間アプリ:利用頻度、機能別使用率、エラー発生率カスタマーサポート:問い合わせ内容を抽出・分析定性調査の実施目的に合わせたユーザーインタビューの実施で顧客を理解ユーザビリティテストでリスクを下げるカスタマーサポートへのヒアリングを通した状況把握競合分析同業他社の顧客体験を評価・比較し差別化ポイントを探る優れた体験を提供している他業界の事例研究により転用ポイントを探る内製化の目標を明確にする設定すべき3つの目標レベル短期目標(3-6ヶ月):特定の画面・機能の改善、基本的なデザインシステムを整備中期目標(1年):サービス全体の一貫性確保、継続的改善サイクルを確立長期目標(2-3年):組織全体のデザイン力向上、主要事業の基盤となる顧客体験実現を目指したロードマップの策定フェーズ2:デザインシステムの構築(2-4ヶ月)なぜデザインシステムが顧客体験向上に必須なのかデザインシステムは、一貫性のある顧客体験を効率的に提供するための基盤です。デザインシステムがもたらす顧客体験への効果としては以下のようなものがあります。一貫性のある体験すべての画面で統一されたUIパターンを提供するユーザーの学習コストを下げ、習熟をサポートプロダクトへの愛着がブランド体験の強化につながる品質の標準化アクセシビリティ基準の設定と、社内運用方法の整備レスポンシブやOS標準コンポーネント利用に関するガイドライン制作レビューや承認など、コミュニケーション方法の最適化迅速な改善サイクル再利用可能なコンポーネントで開発工数30-50%削減へ全体への影響を考慮しつつ、効率的な改善が可能な組織体制にA/Bテストやユーザビリティを高速で実施できる仕組みづくりデザインシステム構築の実践ステップステップ1:コアコンポーネントの定義最小限の基本コンポーネントから始めますボタン(Primary / Secondary / Tertiary)フォーム要素(入力欄、選択肢、チェックボックス)ナビゲーションカードモーダル・ダイアログステップ2:デザイントークンの設定カラーパレット(ブランドカラー、機能色、グレースケール)タイポグラフィ(フォントサイズ、行間、ウェイト)スペーシング(余白の基準値)シャドウ・ボーダーステップ3:実装・ドキュメント化Figmaでのデザインコンポーネント作成React / Vue / Angularでのコンポーネント実装Storybookでのドキュメント化とプレビュー環境構築React、Figma、Storybookを活用したデザインシステム開発の詳細は、Figma×Storybook連携ガイド|React開発でデザインシステム効率化で実践的に解説しています。フェーズ3:組織体制の構築(並行実施)顧客体験改善のための役割定義必要な3つの役割を簡単に説明します。各役割が連携し、継続的に顧客体験を改善できる体制を構築します。UXデザイナーユーザーリサーチの実施や体験構想情報設計とワイヤーフレームの作成ユーザビリティテストの企画・実施UIデザイナービジュアルデザインの作成デザインシステムの運用・更新ユーザーフレンドリーなUIの制作エンジニアデザインシステムコンポーネントの実装パフォーマンス最適化デザイナーとの協働Design Enablementによる組織力向上ゆめみが実践する「Design Enablement(デザイン・イネーブルメント)」は、組織全体でデザイン的思考を可能にするアプローチです。Design Enablementの3つの柱営業、マーケティング、エンジニアのすべての職種がユーザー視点で考えるプロダクトオーナーのデザイン理解度を向上するステークホルダー全体で顧客体験を重視できる組織作りスキル育成プログラム社内勉強会やワークショップの定期開催OJTによる実践的な学習機会を重視外部専門家による伴走で実践的な知見を移転評価・フィードバック体制定期的なデザインレビューで組織標準を高めるユーザーフィードバックの共有会でユーザー視点を深める改善成果を可視化することで継続できる体制へDesign Enablementの詳細については、Design Enablementとは|組織のデザイン力を引き出す実践的アプローチで詳しく解説しています。フェーズ4:継続的改善サイクルの確立(3ヶ月〜)効果測定の仕組み構築定量・定性の両面から成果を可視化し、学びを次の改善施策へとつなげるサイクルを構築するために測定すべき3つの指標カテゴリについて解説します。UX指標タスク完了率:ユーザーが目的を達成できる割合タスク完了時間:目的達成までの時間エラー発生率:操作ミスの頻度SUS(System Usability Scale):総合的な使いやすさ評価ビジネス指標コンバージョン率の改善が見られるか?離脱率が低減できているか?セッション時間に変化は見られるか?リピート率の向上はできているか?定性指標NPS(Net Promoter Score)顧客満足度(CSAT)ユーザーインタビューでの声より詳細な効果測定手法については、UXデザインの効果を測定する方法|ビジネス成果に繋がる評価指標と改善プロセスで包括的に解説しています。200社支援から学ぶ成功パターンと失敗回避法ゆめみが24年間で200社以上を支援する中で見えてきた、顧客体験(UX)内製化を成功させる企業の共通パターンをご紹介します。成功企業の3つの共通点1. 経営層のコミットメント成功する企業に見られる特徴経営層が「顧客体験向上」を経営戦略の柱として明確に位置づけている複数年にわたる計画的な組織構築の視点を持っている(例:3年で10-30名規模のデザイン組織)成果として、顧客満足度の大幅向上(20-30%)やサービス売上の増加(30-50%)を実現できている重要なポイント内製化を単なるコスト削減ではなく、競争力強化のための投資と捉える初期投資として十分な予算と人員を確保する短期的な成果だけでなく、中長期的な視点で評価する2. 段階的なアプローチ成功する企業が実践する進め方最初の3-6ヶ月:限定的な範囲(1つのサービス・機能)でパイロット実施定量的な成果を可視化してから、段階的に展開範囲を拡大デザインシステムも最小限から始め、実際の使用を通じて拡充段階的アプローチのメリット小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体の理解と支持を獲得できるリスクを最小化しながら、学習機会を最大化できる早期から実践的なノウハウを蓄積できる3. 外部専門家の戦略的活用多くの成功企業に共通する支援活用パターン初期フェーズ(1年目):専門家が伴走し、実践を通じたスキル移転中期フェーズ(2年目):定期的なレビューとアドバイスで自走を支援自立フェーズ(3年目以降):完全自走を実現し、必要時のみスポット支援外部支援を成功させるポイント「ノウハウ移転」と「自走できる組織づくり」を明確な目標として設定する単なる作業代行ではなく、一緒に実践しながら学ぶ伴走型の支援体制に支援終了後も継続できる体制・プロセスの構築を重視ゆめみの内製化支援アプローチYear 1: 一緒に実践(伴走型支援)├─ デザインシステム構築を共同実施├─ OJTによるスキル移転└─ 体制・プロセス設計支援Year 2: 段階的な自走支援├─ 定期的なレビュー・アドバイス├─ 難易度の高い課題への助言└─ 組織運営のサポートYear 3: 完全自走└─ 必要時のスポット支援のみよくある失敗パターンと回避法失敗パターン1:完璧主義による遅延問題: 完璧なデザインシステムを目指して、いつまでも本番リリースできない回避策MVP(Minimum Viable Product)思考:最小限から始めて段階的に拡充する80%の完成度で運用開始する:実際の使用フィードバックから学ぶ継続的改善を前提にする:最初から完璧を求めない失敗パターン2:デザイナー任せにする問題: デザイナーを採用したが、組織全体の意識が変わらず孤軍奮闘状態に回避策経営層からのメッセージ発信:顧客体験重視の方針を明確化するクロスファンクショナルチームの編成:デザイナー・エンジニア・ビジネス側の協働を促すDesign Enablement的視点:デザイナーのみならず、組織全体でデザイン思考を実践する機会を作る失敗パターン3:効果測定の欠如問題: 改善活動はしているが、ビジネスインパクトが不明確回避策KPIの事前設定:何を改善したいのかを数値で定義しておく定期的なレポーティング:月次で経営層に報告する小さな成功の可視化:チーム全体でのモチベーション維持できる工夫をBtoB企業において抑えておくべきポイントBtoB特有の課題と対応策1. 複雑な業務フローへの対応BtoB特有の複雑性複数の役割(承認者、実行者、閲覧者)が存在する長期間にわたる利用プロセスを整理しなければならない業界特有の専門用語・ルールや多数存在する対応策詳細なユーザーリサーチ:各役割の実際の業務フローを理解する段階的な体験設計:初心者から熟練者には学習レベルに差があるため、ターゲットを明確にし段階的にアプローチする柔軟なカスタマイズ性:企業ごとの業務に適応できるような拡張性を持たせる工場システムや産業機器など、BtoB特有のUI/UX改善については、工場システム・産業機器の設計アプローチ|製造業のBtoBシステムUI・UX改善法で詳しく解説しています。2. 長期的な顧客関係の重視BtoB企業の顧客体験の特徴単発の取引ではなく、長期的なパートナーシップを前提に導入後のサポート・教育コンテンツの整備カスタマーサクセスとの連携が不可欠内製化による優位性顧客の要望に迅速に対応できる業界知識を深めた継続的改善に伴走できる長期的な信頼関係によりフィードバックを積極的に収集できるBtoB企業のUXデザインについては、BtoB向けUI/UXデザインの成功法則|業務効率を重視した設計アプローチも併せてご参照ください。内製化を加速するツールとプラットフォームデザインツールの選定推奨ツールセットFigma:デザインとプロトタイピングクラウドベースでの共同編集デザインシステムの管理に最適デベロッパーハンドオフ機能Storybook:コンポーネントカタログUIコンポーネントの可視化ドキュメント自動生成ビジュアルリグレッションテストデザインシステム構築に適したツールの選定については、デザインシステムツール比較2025|無料〜企業向け8選の選び方をご参照ください。ユーザーリサーチツールuniiリサーチユーザーインサイトの発見や仮説検証をサポートするリサーチ支援サービスです。特に、定性調査(インタビューや観察など)に強みがあり、リクルーティング(対象者募集)から調査設計、分析までをワンストップで提供しています。UXリサーチや新規事業開発の現場でよく使われます。toittaインタビュー音声をAIで自動で書き起こし・要約・整理できる分析ツールです。発話を切片化・グルーピングして、インサイト抽出を効率的に行うことがきます。ビザスクビジネス課題に応じて、専門家(有識者)にインタビューできるナレッジシェアプラットフォームです。ユーザー企業は、業界経験者や専門家と1時間単位でスポット相談が可能で、市場理解・事業検討・プロダクト企画などの調査フェーズで広く活用されています。まとめ:顧客体験(UX)内製化で実現する持続的競争優位顧客体験(UX)の内製化は、単なるコスト削減ではなく、持続的な競争優位を構築する戦略的投資です。今日から始める第一歩内製化の成功は、小さな一歩から始まります現状の顧客体験を可視化する(ユーザージャーニーマップ作成)最も改善インパクトの大きい領域を特定する(データ分析)デザインシステムのMVPを計画する(基本コンポーネント10-15個)外部専門家の支援を検討する(初期の伴走型支援)もし現在、顧客体験(UX)の内製化や組織強化について課題を感じていらっしゃるなら、それはビジネスを大幅に成長させる重要な機会かもしれません。