デザインシステムの重要性が広く認識される中、「どのツールを選べばよいのかわからない」「導入したいが具体的な進め方がわからない」といった声を多く耳にします。デザインシステム構築には多様なツールが存在し、それぞれに特徴や適用場面が異なるため、組織の状況に応じた最適な選択が求められます。本記事では、デザインシステム構築に必要なツール群を体系的に整理し、組織の規模・予算・技術スタックに応じた選定フローと、実践的な導入ステップを詳しく解説します。構築後の運用・改善フェーズまでを見据えた包括的なガイドとして、デザインシステム導入を成功に導くための実用的な情報をお届けします。デザインシステム構築に必要なツール群の全体像デザインシステム構築では、目的に応じて複数のツールを組み合わせて使用します。まず、全体像を把握するために、主要なツールカテゴリーと代表的なツールを整理しましょう。1. デザインツール(UIデザイン・プロトタイピング)Figmaゆめみでご支援させていただいているデザインシステム構築プロジェクトでは、Figmaを基本ツールとして展開しています。ゆめみはFigmaの公式パートナー企業としての最新知見を提供可能です。特徴クラウドベースのデザインツールリアルタイム、複数人での共同編集が可能コンポーネントシステムが強力Devmodeにより開発者との連携機能が充実Sketch現在はFigmaを用いる企業が多く、新規採用は減少傾向にあります。特徴Mac専用のベクターベースデザインツールプラグインエコシステムが豊富ローカルファイル管理老舗ツールとしての安定性Adobe XD2023年にAdobe XDの新機能開発が停止され、現在はメンテナンスモードに移行しています。特徴Adobe Creative Cloudとの統合プロトタイピング機能が強力音声プロトタイピングなどに対応Creative Suiteユーザーには馴染みやすい2. デザイントークン管理ツールデザイントークンとは、色・文字サイズ・余白などのデザインの基本要素を数値化して管理する仕組みです。これにより、デザインの一貫性を保ちながら、変更時の作業効率を大幅に向上させることができます。Tokens Studio(旧Figma Tokens)Figmaと連携してデザイントークンを管理するツールです。Figma上でデザイントークンを直接管理:デザイナーが使い慣れたFigma内で色やサイズを一元管理できます。GitHub連携による版管理:変更履歴を記録し、チームで安全に共同作業が可能です。複数ブランドテーマの管理が可能:異なるブランドやダークモード・ライトモードなどのテーマを効率的に管理できます。Style DictionaryAmazonが開発した、デザイントークンを様々な形式に変換するツールです。Amazonが開発したオープンソースツール:無料で使用でき、大企業での実績もある信頼性の高いツールです。様々な形式でトークンを出力:Web・iOS・Android・デスクトップアプリなど、各プラットフォーム用の形式に自動変換が可能です。カスタマイズ性が非常に高い:組織独自の要件に合わせて柔軟に設定変更が可能です。Zeroheightデザインシステムの情報を整理し、美しいドキュメントサイトを作成するツールです。デザインシステムドキュメント作成に特化:デザインガイドラインやコンポーネントの使用方法を分かりやすく文書化します。Figma/Sketchとの連携が強力:デザインツールの情報を自動的に取り込み、常に最新の状態を維持できます。開発者向けコード出力機能:デザイナーが作成したコンポーネントから、開発者が使用するコードを自動生成できます。3. コンポーネントライブラリ・UI開発ツールUIコンポーネント(ボタン・入力フォーム・カードなどの再利用可能なUI部品)を効率的に開発・管理するためのツールです。StorybookUIコンポーネントを個別に開発・テストできる専用環境を提供するツールです。UIコンポーネントの独立した開発環境:他の機能に影響されることなく、コンポーネント単体での動作確認が可能です。様々なフレームワークに対応:React・Vue.js・Angularなど、主要な開発技術すべてに対応しています。ドキュメント生成機能:コンポーネントの使用方法や設定項目を自動的に文書化します。ビジュアルテスト機能:コンポーネントの見た目が意図しない変更により崩れていないかを自動チェックできます。Bit作成したUIコンポーネントをチーム間・プロジェクト間で効率的に共有するプラットフォームです。コンポーネントの共有・再利用プラットフォーム:一度作成したコンポーネントを他のプロジェクトでも簡単に使用可能です。独立したコンポーネント管理:各コンポーネントを個別にバージョン管理し、必要に応じて更新します。複数プロジェクト間での共有が容易:組織内の異なるチームが作成したコンポーネントを相互活用できます。4. ドキュメント・ガイドライン管理ツールデザインシステムの使用方法・ガイドライン・運用ルールなどを整理し、チームメンバーが参照しやすい形で管理するツールです。Notion多様な形式のコンテンツを1つのプラットフォームで管理できる万能型ドキュメントツールです。柔軟なドキュメント作成:テキスト・画像・表・データベースなど、様々な形式のコンテンツを組み合わせて作成します。チーム内での情報共有に適している:リアルタイムでの共同編集やコメント機能により、チーム間のコミュニケーションが円滑になります。テンプレート機能が豊富:デザインシステム用のテンプレートを活用し、効率的にドキュメントを作成できます。GitBook技術文書の作成に特化した、書籍のような美しいドキュメントサイトを作成できるツールです。技術文書に特化したドキュメントツール:コードサンプルや技術仕様書などを見やすく整理して表示します。Git連携による版管理:開発者が使い慣れたGitシステムと連携し、ドキュメントの変更履歴を詳細に管理できます。検索機能が強力:大量のドキュメントの中から必要な情報を素早く見つけることが可能です。Confluence大企業での使用を想定した、高度な管理機能を持つドキュメント管理システムです。エンタープライズ向けドキュメント管理:大規模組織での使用に必要なセキュリティ・管理機能を完備しています。Atlassianエコシステムとの連携:Jira(プロジェクト管理)やTrello(タスク管理)などの他ツールとシームレスに連携できます。権限管理機能が充実:部門・役職・プロジェクトごとに細かくアクセス権限を設定し、情報セキュリティを確保します。組織状況別:最適なツールの選び方組織の規模、予算、技術スタック、チーム構成によって最適なツール構成は大きく異なります。あなたの組織に最適なツール構成を見つけましょう。ステップ1:組織規模の確認小規模チーム(5-20名)の場合予算:月額5万円〜ツール構成の例:Figma + Notion + 軽量なコンポーネント管理で、コストを抑えながら導入できます。使用イメージデザイナーがFigmaでコンポーネントを作成し、使用ガイドラインをNotionで文書化。開発者はFigmaのDev Modeから直接CSSを取得し、シンプルなコンポーネントライブラリを構築。月1回のレビュー会議でNotionのドキュメントを更新しながら、段階的にシステムを拡張していきます。中規模チーム(20-100名)の場合予算:月額10万円〜ツール構成の例:スケーラビリティと管理性のバランスを考慮し、Figma + Tokens Studio + Storybook + GitBookなどを使用できます。使用イメージFigma上でTokens Studioを使ってデザイントークン(色・サイズ・余白)を管理し、GitHubと連携して開発環境に反映。デザイナーがFigmaでコンポーネントを更新した際に、開発者がStorybookで対応するReactコンポーネントを作成。完成したコンポーネントの使用方法をGitBookで体系的にドキュメント化することで、複数チームが参照できる状態を維持できると考えられます。大規模組織(100名以上)の場合予算:月額50万円〜ツール構成の例:高度な管理機能と統制が必要になるため、複数のツールを組み合わせて使用します。使用イメージ複数プロダクトのデザイントークンを1つのツールで一元管理し、iOS・Android・Webなどの各プラットフォーム向けに自動変換できる環境を構築することが重要です。例えばFigmaとStorybookの連携をZeroheightで可視化することで、デザイナーと開発者が同じ情報を参照できる環境を構築できるでしょう。新しいコンポーネントは社内確認プロセスを経て承認する、各種ガイドラインを通じて各プロダクトに自動配布するといった運用を想定し、ガバナンスの強化が求められます。定期的にデザインシステムの使用状況やプロダクトの状況に基づいて最適化、改善していくアプローチも必要です。ステップ2:技術スタックの確認使用している技術スタックによって、デザインシステム構築に最適なツール構成が変わってきます。例えば以下のようなものを検討できます。React系プロジェクトReactはFacebookが開発したWebアプリケーション開発フレームワークで、多くの企業で採用されています。Storybook + Bit の組み合わせ:Storybookでコンポーネントを管理し、Bitで複数プロジェクト間でのコンポーネント共有を実現できます。Figma to React系プラグインを活用:Figmaのデザインから自動的にReactコードを生成し、デザインと開発の連携を効率化できます。Vue.js系プロジェクトVue.jsは学習コストが低く、日本でも人気の高いWebアプリケーション開発フレームワークです。Storybook for Vue + Histoire:Vue専用のStorybookでコンポーネント管理を行い、Histoireで高速な開発体験を提供できます。Vue Design System の活用:Vue.js専用に最適化されたデザインシステム構築ツールを使用しましょう。Angular系プロジェクトAngularはGoogleが開発した大規模なWebアプリケーション向けのフレームワークで、エンタープライズ系プロジェクトでよく採用されます。Angular Elements + Storybook:Angularコンポーネントを独立したWebコンポーネントとして作成し、Storybookで管理できます。ng-packagr でのライブラリ化:Angularの標準ツールを使ってコンポーネントライブラリを作成・配布します。マルチフレームワーク複数の技術を使用している組織や、将来的に技術変更の可能性がある場合に適した構成です。Web Components ベースの設計:どのフレームワークでも使用できる標準的なWebコンポーネントとして開発します。Lit や Stencil の活用検討:軽量で高性能なWebコンポーネント作成ツールを使用して、フレームワークに依存しないコンポーネントを構築します。ステップ3:予算・運用体制の確認組織の予算制約と運用体制に応じて、最適なツール構成と導入アプローチを決定します。予算重視(月額10万円以下)コストを最小限に抑えながら、基本的なデザインシステムを構築したい場合のアプローチです。オープンソース中心の構成:Style Dictionary(無料)+ Storybook(無料)+ GitHub(無料プランあり)を組み合わせて基盤を構築します。Figma Community リソース活用:無料で公開されているデザインシステムテンプレートやコンポーネントを活用し、開発時間を短縮します。内製ドキュメント管理:Notion(無料プランあり)やMarkdownファイルを使用し、外部ツールへの依存を最小化します。機能重視(予算制約が比較的少ない)予算に余裕があり、高機能なツールを活用して効率的なデザインシステムを構築したい場合のアプローチです。有料ツールを積極活用:Tokens Studio Pro・Zeroheight・Figma Professionalプランなど、高機能版を使用して作業効率を最大化します。専門ツールの組み合わせ:各領域に特化したベストオブブリードのツールを組み合わせ、最高品質のシステムを構築します。外部コンサルティング併用:デザインシステム構築の専門家によるコンサルティングを活用し、ベストプラクティスを効率的に導入します。運用リソースが少ないデザインシステムの運用・保守に割ける人員や時間が限られている場合のアプローチです。オールインワン系ツール選択:Figma + Zeroheightのような統合性の高いツール組み合わせを選択し、ツール間連携の手間を削減します。自動化機能を重視:デザイン変更の自動反映・コード生成・ドキュメント更新などの自動化機能を最大限活用します。メンテナンスコストを最小化:シンプルな構成を保ち、定期的な更新やメンテナンス作業を最小限に抑制します。実践的導入ステップ:3ヶ月でデザインシステムを構築実際にデザインシステムを導入する際の具体的なステップを、8週間のタイムラインで整理しました。各週の作業内容と成果物を明確にすることで、プロジェクト管理がしやすくなります。第1-3週:現状分析とツール選定Week 1-2: 現状調査既存デザインアセットの棚卸しや技術スタック制約の整理チームのワークフロー分析やステークホルダーへのヒアリングWeek 3: ツール選定要件定義書を作成し、ツールの比較評価POC(概念実証)を実施し、最終ツール選定し予算承認成果物現状分析レポート要件定義書ツール選定理由書プロジェクト計画書第4-8週:基盤構築Week 4-8: デザイン基盤デザイントークンの定義を行い、カラーパレット・タイポグラフィの整理Figmaライブラリの初期構築Week 4-8: 開発基盤開発環境のセットアップやStorybookの初期設定ビルドパイプラインの構築やCI/CDの設定成果物デザイントークン定義書Figma コンポーネントライブラリ(基礎版)Storybook 環境開発ガイドライン(初版)第8-11週:コンポーネント開発Week 8-10: 基本コンポーネントButton, Input, Card等の基本コンポーネントについて、バリエーション・状態の定義アクセシビリティ対応ユニットテストの作成Week 10-11: 複合コンポーネントForm, Navigation, Modal等の複合コンポーネントを作成レスポンシブ対応やインタラクション定義ビジュアルテストの実装成果物基本コンポーネントセット複合コンポーネントセットテストスイートStorybook ドキュメント第11-12週:ドキュメント化と導入準備Week 11-12: ドキュメント作成使用ガイドラインやデザイン原則を文書化運用ルールを策定し、デザイナーや開発者向けドキュメントを作成Week 11-12: 導入準備既存プロジェクトへの適用テストを行い、フィードバック収集・改善各部署への導入研修を含めた正式リリース準備成果物完全なドキュメントサイト研修資料導入チェックリスト運用マニュアル運用フェーズでの継続的改善デザインシステムは「作って終わり」ではありません。継続的な改善と進化が成功の鍵となります。1. 使用状況の監視・分析デザインシステムが実際にチームで活用されているかを定期的にチェックし、改善点を見つけるための分析を行います。採用率の追跡デザインシステムがどの程度使われているかを数値で把握します。コンポーネント使用率の測定:「全体の画面のうち、何%がデザインシステムのボタンを使用しているか」などを調査新規コンポーネント要求の分析:「月に何件、新しいコンポーネント作成の依頼があるか」を記録し、システムの不足部分を特定独自実装される理由の調査:デザインシステムを使わずに個別に作成されたUI部品について、その理由をヒアリング品質指標の設定デザインシステム導入による効果を測定可能な指標で評価します。デザイン一貫性をスコア化:「同じ機能のボタンが異なるデザインで実装されている箇所の数」などを定期的に測定開発効率の向上度:「新しい画面を作成する際の作業時間が導入前と比べてどの程度短縮されたか」を計測バグ・不具合の減少率:「UI関連のバグ報告件数が導入前後でどの程度変化したか」を追跡ツール活用状況各ツールがチームに浸透しているかを使用データから確認します。Figmaライブラリの使用状況:「デザイナーがライブラリからコンポーネントを使用した回数」や「独自作成vs既存利用の比率」を分析ツールへのアクセス数:「開発者がコンポーネントの仕様を確認するためにStorybookを閲覧した回数」を記録ドキュメント参照頻度:「ガイドラインやルールが記載されたドキュメントがどの程度参照されているか」を確認2. フィードバック収集・改善サイクルチームからの意見や要望を体系的に収集し、デザインシステムを継続的に改善していく仕組みを作ります。定期的なレビュー会議決まったタイミングでデザインシステムの状況を振り返り、改善計画を立てます。月次:使用状況レビュー「今月はどのコンポーネントがよく使われたか」「新たに発生した課題は何か」を共有四半期:大幅改善・新機能検討「次の3ヶ月で追加すべき新しいコンポーネント」「既存コンポーネントの大幅な改修」を検討年次:ツール・戦略の見直し「使用しているツールは最適か」「来年の組織拡大に向けた戦略変更が必要か」を判断改善要求の管理チームメンバーからの要望を整理し、優先順位をつけて対応していく仕組みです。プロジェクト管理ツールでの要求管理:「新しいアイコンが必要」「ボタンの色を変更したい」などの要望をチケット形式で管理優先度付けのための指標策定:多数の要望から「緊急度」「影響範囲」「工数」を考慮して対応順序を決定リリースサイクルの設定:「毎月第3週に新機能をリリース」など、定期的な更新スケジュールを設定コミュニティ形成デザインシステムを中心とした社内外のコミュニティを育成し、知見を共有します。社内デザインシステムコミュニティ:デザイナー・開発者・プロダクトマネージャーが参加する定期的な勉強会を開催ベストプラクティス共有会:「こんな使い方が効果的だった」「この課題はこう解決した」などの経験を共有外部コミュニティへの参加:他社の事例や最新のトレンドを学ぶため、業界のイベントやコミュニティに積極参加3. スケーラビリティへの対応組織の成長や技術の進化に合わせて、デザインシステムを拡張・最適化していきます。組織成長への対応会社やチームが大きくなったときに、デザインシステムも対応できるよう準備します。新チーム・新プロダクトへの展開:「新しい事業部が立ち上がったときに、既存のデザインシステムをどう適用するか」を計画し、オンボーディング資料を準備権限管理・ガバナンスの強化:「誰がコンポーネントを変更できるか」「新規追加の承認プロセス」などのルールを明文化し、品質を維持多ブランド・多言語対応:「グループ会社の別ブランド用」「海外展開用の多言語版」など、複数のバリエーションを効率的に管理技術進化への対応新しい技術やツールが登場したときに、デザインシステムを適切にアップデートします。新フレームワーク・ライブラリ対応:「ReactからVue.jsに移行する場合」「新しいUIライブラリが登場した場合」の移行計画を策定デザインツールのアップデート:「Figmaの新機能」「Storybookのバージョンアップ」に対応し、より効率的な運用を実現アクセシビリティ基準の更新:「WCAG(ウェブアクセシビリティガイドライン)の新バージョン」に合わせてコンポーネントを改修パフォーマンス最適化デザインシステムが重くならないよう、定期的に最適化を行います。バンドルサイズの最適化:「使用していないコンポーネントをアプリに含めない仕組み」を構築し、アプリの読み込み速度を維持読み込み速度の改善:「よく使われるコンポーネントを優先的に読み込む」「画像の最適化」などでユーザー体験を向上不要コンポーネントの整理:「もう使われていない古いコンポーネント」を定期的に削除し、システム全体をクリーンに保持失敗を避けるための注意点とベストプラクティスよくある失敗パターンと対策1. 過度に複雑なシステム設計初期から完璧を目指しすぎる例:「最初から50個のコンポーネントを作ろう」「すべての画面パターンに対応できるシステムを作ろう」と意気込み、半年経っても何も完成しない状況に陥る。結果として、現場では独自のUI部品が乱立し、デザインシステムが使われないまま放置される。対策:MVP(最小実行可能製品)から開始し、段階的に拡張。まずは「ボタン・入力フィールド・カード」の3つだけを完璧に作り、実際に使ってもらいながら必要に応じて追加していくことが大切です。2. ステークホルダーの巻き込み不足デザイナーだけで進めてしまう例:デザイナーが「素晴らしいデザインシステムができた!」と意気揚々と開発チームに共有したところ、「技術的に実装が困難」「既存コードとの整合性が取れない」「そもそも必要性を感じない」と言われ、誰も使ってくれない状況になる。対策:プロジェクト初期から開発者・PM・経営陣を巻き込見ましょう。「なぜデザインシステムが必要なのか」を全員で議論し、「どんなコンポーネントを優先的に作るべきか」を現場の声を聞きながら決定します。3. 運用体制の未整備構築後の維持・更新体制が不明確例:半年かけて素晴らしいデザインシステムを構築したが、「誰が更新するのか」「予算はどこから出るのか」「新しい要望にどう対応するのか」が決まっていない。結果として、新機能追加時に独自のUI部品が作られ、3ヶ月後にはデザインシステムが形骸化してしまう。対策:運用責任者・更新ルールを定め、予算を事前に確保しましょう。「デザインシステム担当者を1名専任で配置」「月1回の定期更新会議を設定」「年間運用予算を確保」などの体制を構築前に整備することが大切です。成功のためのベストプラクティス1. 段階的な導入アプローチフェーズ1:基本コンポーネント(Button, Input等)実践例:最初の1ヶ月で「ボタン」「入力フィールド」「テキスト」の3つだけを完璧に作成。デザイナーはFigmaでバリエーションを整理し、開発者はReactコンポーネントを実装。新しい画面作成時には必ずこの3つを使用するルールを設定し、チーム全体で使用感を検証。フェーズ2:複合コンポーネント(Form, Card等)実践例:基本コンポーネントの使用が定着した2ヶ月目から、「検索フォーム」「商品カード」「ナビゲーション」など、複数の基本コンポーネントを組み合わせた機能単位を作成。実際のプロジェクトで使いながら改善点を洗い出し。フェーズ3:レイアウト・テンプレート実践例:3ヶ月目以降、「商品一覧ページ」「ユーザー詳細ページ」など、ページ全体のテンプレートを作成。新機能開発時の工数が大幅に削減され、デザインの一貫性も向上。2. 継続的なコミュニケーション週次:進捗共有の会議実践例:毎週金曜日の15時から30分間、「今週作成したコンポーネント」「発見した課題」「来週の予定」を関係者全員で共有。デザイナー・開発者・プロダクトマネージャーが参加し、リアルタイムで方向性を調整します。月次:フィードバック収集実践例:月末に全チームメンバーにアンケートを実施。「使いやすかったコンポーネント」「困った点」「追加してほしい機能」を収集し優先度をつけ、翌月の改善計画に反映します。四半期:戦略見直し実践例:3ヶ月ごとに経営陣も参加する振り返り会議を開催。「デザインシステム導入による効果測定」「次四半期の重点項目」「予算・人員の見直し」を議論し、長期的な方向性を決定します。3. 測定可能な目標設定デザイン作業時間の短縮(目標:30%削減)測定例:新しい画面デザイン作成にかかる時間を導入前後で比較します。「商品詳細ページのデザイン:導入前8時間→導入後5時間」など、具体的な数値で効果を確認しましょう。開発速度の向上(目標:20%向上)測定例:同じ機能の実装にかかる開発時間を比較。「ユーザー登録フォームの実装:導入前3日→導入後2.5日」など、工数削減効果を定量的に評価します。UI一貫性の改善(目標:不整合90%削減)測定例:月1回、全画面のUIレビューを実施し、「同じ機能なのに異なるデザイン」の箇所をカウント。導入前50箇所→導入後5箇所など、一貫性向上を数値で追跡します。まとめ:デザインシステム成功への道筋デザインシステム構築ツールの選定と導入は、組織の状況を正確に把握し、適切なツール構成を選択することから始まります。本記事で紹介した選定フローと8週間の導入ステップを参考に、あなたの組織に最適なデザインシステムを構築してください。重要なのは、「完璧なシステムを一度に作る」のではなく、「継続的に改善できるシステムを段階的に構築する」ことです。小さく始めて、チームの学習と成長に合わせて拡張していくアプローチが、長期的な成功につながります。デザインシステムは単なるツールやコンポーネントの集合体ではありません。組織の設計プロセスを改善し、チーム間のコミュニケーションを円滑にし、最終的にはより良いユーザー体験を実現するための「仕組み」です。適切なツール選択と実践的な導入アプローチで、あなたの組織にとって価値のあるデザインシステムを実現しましょう。デザインシステム構築に興味をお持ちの企業様は、ぜひゆめみにご相談ください。24年の実績と200社以上の支援経験を活かし、最適なソリューションをご提案いたします。