「ユーザーアンケートを実施して、要望が多かった機能を追加したのに、全く使われない」「ユーザーインタビューで『このデザインは良い』と言われたのに、リリースしたら評判が悪かった」。多くの企業がUXリサーチの重要性を認識し、実践しています。しかし、「ユーザーの声を聞いている」にもかかわらず、ビジネスの成果に結びつかないケースは後を絶ちません。その原因は、リサーチの「目的」と「手法」が適切に設計されていないことにあります。この記事では、200社以上の大企業をご支援してきたゆめみの実績に基づき、単なる「声を聞く」活動で終わらせない、ビジネス成果に直結するUXリサーチの実践的な進め方を解説します。ステップ1:リサーチの目的を「問い」に変換するUXリサーチの価値を最大化するために重要なのは、実際の調査よりもむしろ、その前段階での丁寧な設計と準備です。必要なのは、「何を明らかにしたいのか」というリサーチの目的を、具体的で検証可能な「問い」に落とし込むことです。❌ 悪い問いの例: 「新サービスの満足度を知りたい」⭕ 良い問いの例: 「新サービスの登録プロセスにおいて、ユーザーが最も離脱しやすいのはどのステップで、その原因は何か?」良い問いは、リサーチで何を観察し、誰に何を聞くべきかを明確にしてくれます。この問いを定義するプロセスには、プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアなど、関係者全員を巻き込むことが不可欠です。チーム全員が「この問いに答えるためにリサーチを行う」という共通認識を持つことが、後のアクションにつながる鍵となります。ステップ2:目的に合ったリサーチ手法を選択するリサーチの「問い」が明確になれば、それに答えるための最適な手法を選択します。UXリサーチの手法は多岐にわたりますが、大きくは「定性リサーチ」と「定量リサーチ」に分けられます。定性リサーチ:課題の「なぜ」を深掘りするユーザーの行動の背景にある、考えや感情、文脈を深く理解するのに適しています。ユーザーインタビュー:1対1の対話を通じて、ユーザーの潜在的なニーズや課題の根本原因を探ります。「なぜそう感じるのか?」を繰り返し問うことで、表面的な意見の奥にある本音(インサイト)にたどり着けます。ユーザビリティテスト:実際にユーザーに製品やプロトタイプを操作してもらい、どこでつまずき、どのように感じるかを観察します。UIの課題発見に非常に効果的です。定量リサーチ:課題の「規模」や「割合」を把握するユーザー全体の傾向や、課題の大きさを数値で客観的に把握するのに適しています。アンケート調査:大規模なユーザーに対して、特定の質問への回答を収集します。満足度や利用頻度など、仮説の検証や市場規模の把握に役立ちます。アクセス解析:Google Analyticsなどのツールを用いて、ウェブサイトやアプリ上でのユーザーの行動データを分析します。離脱率やクリック率などから、問題のある箇所を特定できます。重要なのは、これらを単独で使うのではなく、目的に応じて組み合わせることです。例えば、アクセス解析で「離脱率が高いページ」を特定し(定量)、そのページのユーザーにインタビューを行うことで「なぜ離脱するのか」という原因を深掘りする(定性)、といった連携が非常に有効です。ステップ3:リサーチ結果を「次のアクション」に翻訳するリサーチから得られた発見は、それだけでは価値を生みません。その発見を基に、「だから、私たちは次に何をすべきか」という具体的なアクションプランに落とし込むプロセスが不可欠です。例えば、「インタビューの結果、多くのユーザーが料金プランの複雑さに不満を感じていることが分かった」という発見があったとします。これを、「料金ページの構成を見直し、3つのプランの長所と短所が一目でわかる比較表を追加する」といった、誰が読んでも解釈がぶれない具体的な改善案に「翻訳」します。このプロセスを円滑に進めるためには、リサーチ結果の共有会に、意思決定者を含むすべての関係者が出席することが重要です。データやユーザーの発言動画を交えながら報告することで、チーム全体に「ユーザーが本当に困っている」という実感が共有され、改善への機運が高まります。まとめ:UXリサーチは、ユーザーと対話する「文化」である成果につながるUXリサーチとは、単発の調査イベントではありません。それは、プロダクト開発のあらゆる段階で、常にユーザーと対話し、学び、改善を繰り返していく「文化」そのものです。そして、その文化は、HCD-Net認定専門家のようなデザイン専門家だけの仕事ではなく、プロダクトに関わる全員が当事者意識を持つことによって育まれていきます。あなたのチームは、ユーザーの本当の姿を見ていますか?それとも、ただ「声を聞いている」だけになってはいないでしょうか。まずは、チームで一番最近聞いた「ユーザーの声」を共有し、それが具体的なアクションに繋がったかどうかを振り返ることから始めてみてはいかがでしょうか。成果につながるUXリサーチの計画・実行でお困りの際は、ぜひゆめみにご相談ください。